2011年6月30日木曜日

始祖鳥とシーラカンス:モルグ街の殺人事件/黄金虫(エドガー・A・ポー)

記事タイトルをコッソリ直してみたりしました。

それはさておき、先日の記事にて、『文明の進化とともにトリックが使えなくなる/陳腐化する』と書きましたが、元祖ミステリーともいうべき、表題2編はどうなのか、改めて読んでみたくなったので、さっそく読んでみました。

【モルグ街の殺人事件】

今読んでみると、過去に読んだ時の残念感がやっぱり思い出されてしまう。
「密室は実は密室ではなかった」
「犯○の正体は意外を通り越してる」
というのが、最大の残念ポイント。

と書くと、僕がこの作品を貶しているように見えるかもしれないけど、そういう意図はない。
「今読むと、残念ながら面白くない」のは、この作品が書かれてから百数十年経つ間に、文明の進化以上にミステリーが進化した証拠なんだと思う。

そして、いまだに綿々と引き継がれる推理小説のお約束が、すでにこの小説でも成り立っているのは驚き(名探偵と間抜けな警察とかね)。
やっぱり、文学史上に残る金字塔的作品なんだろうな。

これがなければ、シャーロック・ホームズは誕生せず、明智小五郎もいないし、もちろん先日あげた、『名探偵の掟』の天下一大五郎も誕生しない。
ミステリーの元祖として、歴史の重みを感じながら読みたい一遍。

例えるならば、絶滅してしまった始祖鳥を、進化の過程を見直すように読む小説かな?


【黄金虫】

『モルグ街の殺人事件』とは違って、こちらは過去読んだとき同様に面白かった。
鮮やかな謎解き(暗号解読)、そしてアクセントに使われる、不気味な髑髏のような模様を持つ、金色の甲虫。
あ、ちなみにタイトルですが、個人的には「おうごんちゅう」でお願いします(笑)。
「こがねむし」だと急速に安っぽくなっちゃうので。

それはさておき、本作がいまだに輝きを失っていないのは、やっぱり暗号解読を取り入れた小説が、あまり進化していないからかな。
暗号解読をテーマにしてしまうと、暗号を解く→何かを手に入れるというパターンから逸脱できなくなるので、進化の方向が限られちゃったんだと思う。
暗号を複雑化したら、読者が置いてけぼりになっちゃうし。

そういう意味では、この『黄金虫』は、太古の姿を今にとどめるシーラカンス的な小説かもしれない。

P.S.
タイトル並びに本文を公開翌日に変更。
恐竜って進化してないやん、って翌日に気づきました。

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