2011年6月24日金曜日

スポーツ+ミステリーの傑作:サクリファイス(近藤史恵)

自転車ブログも兼ねているので、この小説はどっちのジャンルでもヒットして非常に都合がいい。というのは冗談ながら、今年の前半(1~6月)に読んだ小説のなかで、一番面白かった。
まぁ、2008年には話題になっていたので、3周ほど流行から周回遅れしているんですが(笑)

この小説の何がすごいって、ミステリーとしても秀逸だし、スポーツ小説としても秀逸なところ。

まず、ミステリーとして秀逸な点としては、情報の出し方が巧みで、うまくミスリーディングを誘うところにある。
3年前の事故というのが、この小説のバックボーンにあるわけなんだけど、それが故意なのか事故なのか、そして故意の場合、理由は何なのか?
読者はうまく、誤解したまま終盤の赤城の告白で真実を知って、そこから怒涛の謎解きが展開されて……と、ダウンヒルのような、爽快なカタルシスを味わえる展開につながるわけです。

ポイントは、リエージュで赤城に「わざとだよ」と言わせつつ、理由を言わせないところ。

上述の通り、疑問点を分けて考えるなら、「故意なのか事故なのか?」「故意ならばなぜしたのか?」という2つの疑問があるんだけど、赤城の「わざとだよ」は前者の答えでしかない。
だけど、この言葉によって、後者についても、篠崎の推測が正しいかのように錯覚してしまう。
この仕掛けだけで、あんぱん3つは軽いですね。

スポーツ小説として秀逸なのは、マイナー競技がテーマなのに、必要十分な説明が入っているにも関わらず、まったく説明臭くなくて、すんなりと物語に入っていける点。ロードレースの入門書としても、最適な一冊かもしれない。
素人観点だけど、レースシーンもかっこいいです。展開される心理戦が熱い。

ということで、珍しくベタぼめしちゃいました。
が、未読の方は是非読んでみるべし。

2 件のコメント:

  1. 勧めてくださった『サクリファイス』読みました!

    これは傑作ですねえ!(^^)!
    そんなに本を読むほうでもなく、読みなれているわけでもないのですが、面白くて一気に読んじゃいました。

    調子に乗って『エデン』も読もうかと思ってます。

    返信削除
  2. >たてわき07さん

    お気に召して頂いて幸いです。
    エデンはまさにツール・ド・フランスが舞台なので、
    まさに総集編のお伴に最適かも。

    僕は積読ならぬ、積ブログネタがたくさんあって、
    そのうちの一冊が『エデン』なんですよね……。
    早いうちに、『エデン』もレビューを書きます。

    返信削除