2011年8月25日木曜日

登場人物が魅力的:闕所物奉行裏帳合/上田秀人

ここ数日、Google先生がコメントをスパム認定する率が高いです。
って、こんな月間PVが1000~2000ぐらいのブログにスパムしたって、あんま意味ないと思うんですけどね。
僕がいやがらせで反映させてないわけではないので、気づき次第、スパム認定を解除しますので、コメントして頂いた方は、お気軽にお待ち下さい。

その点、書評ネタはあまりコメントも頂かないので、ブログ記事書くのが気楽でいいです。

やや自虐の入ったお知らせはこれぐらいにして、本題。
本日は、時代小説ファンの中では、人気があるらしい、上田秀人氏の作品の中で、先日、第五巻『娘始末』が発売になった『闕所物奉行裏帳合』を取り上げようと思います。
ちなみに、タイトルの「闕所物奉行」ですが、闕所(財産没収刑)の責任者であり、没収した財産を幕府に収める役目を持っています。
かなりマニアックと言うか、僕は初めて聞いた役職です。

すでに五巻まで発売になり、起承転結で言えば、おそらく「転」まで進んだ本シリーズについて、簡単に振り返ると、こんな感じです。

一巻:御免状始末
岡場所(非公認。発覚すれば罰せられる対象)の遊里の闕所の裏に、うごめく野望。
どちらかと言うと、登場人物の顔見せ的な作品。
個人的に、ヒロインの設定から、後付的にストーリーが生まれたんじゃないかと想像している。

二巻:蛮社始末
贅沢を罰せられた富豪の裏に、ご禁制の品を巡る陰謀。
幕閣内の権力闘争も、姿を見せ始めるが、これまた登場人物紹介に近い作品。

三巻:赤猫始末
屋敷を消失させて、罰せられた旗本の屋敷には、放火(赤猫)の跡が。
幕閣内の権力闘争の裏に、江戸の闇の力を握ろうとする存在も現れ、
幕閣内の権力闘争として、将軍派vs大御所派、
江戸の闇の権力闘争として、既存勢力(江戸府内の顔役・吉原)vs狂い犬の一太郎(品川の顔役。当時品川は江戸に入らない)
の構図が明らかになる。

四巻:旗本始末
失踪した旗本を追いかけるうち、窮乏した旗本が娘を売っていることに気づく。
禁じられた人身売買を逆手に、吉原(公認の遊郭)を手に入れ、江戸の闇を握ろうとするものとの戦いが始まる。
権力闘争の構図は変わらず、五巻とともに、物語のターニング・ポイントとなる巻。

五巻:娘始末
娘を売った旗本の闕所を取りあつかう中、遊女の自殺の噂が流れ始める。
自殺したのは、皆、旗本・御家人の娘だった。
四巻から引き続き、物語のターニング・ポイントとなる巻。
ある程度、エンディングまでの道筋が見えた(?)


一部で、「ストーリーに無茶がある」「破綻している」などの辛口批評もある本シリーズですが、確かに、僕が読んでいても、若干気になる個所はあります(個人的には四巻の『旗本始末』はイマイチだと思う)。
また、説明的な台詞・文章が多い気がしますので、文章的に好き嫌いは別れそうな気がします。

しかし、それらを補って余りある登場人物の描写/対比が魅力的で、イコール本作の魅力なのだと思います。

たとえば、鳥居耀蔵は自分の理想の政治を実現できるポジション(町奉行)を狙う理想主義者として描かれます。一方、彼を上司としてしまったがために、大身旗本の生まれゆえに?酷薄な彼にこき使われる飼い犬として、闕所物奉行に引き立てられた主人公・榊扇太郎は、貧乏御家人の悲哀を嘗め尽くしただけに、リアリストです。
現実主義者の扇太郎と、理想主義者の鳥居の対比が、個人的には面白く感じます。

人物の対比と言う意味では、目線の狭い鳥居と、執政(筆頭老中)として、ある程度の目線を持つ水野忠邦との対比も面白いところはあります。

そして、ヒロイン朱鷺の設定もなかなかに面白いですね。これまでに類を見ないヒロイン像ではないでしょうか?
彼女と、扇太郎の関係が巻を積むごとに深まっていくのも、本作を読む楽しみの一つだと思います。

あまり間延びさせず、さっくりと7~8巻ぐらいで終わってくれると、ボリューム的にもちょうどいい感じだと思いますが、どうなるのでしょう。これからも注目していきたいと思います。


2 件のコメント:

  1. どうも、嫌がらせをされたんじゃないかと心配になり連投してしまったtomです(笑)
    T78Kさんはホントに読書家なんですね。僕は今小説より学術書を読まなければならない立場なのですが、紹介してくださった本、読んでみたいです。特にロードレースミステリー三部作。
    しかし「ヘルメットをめぐる冒険」は絶対に意識されてるんだと思ってました。カフェ(喫茶店)も出てきましたし。

    返信削除
  2. >tomさん

    実はGoogle先生のせいにしてますけど実は……(嘘)

    カフェでパスタを食べ、ワインでも飲めば、
    なおさら村上春樹でしたね。
    飲酒運転になっちゃいますので、やりませんが^^;

    『サクリファイス』のシリーズは、
    ロードバイク欲しい病が発症しますので、読む際はご注意ですよ~。

    返信削除