※ちょこちょこネタバレ個所は、白字で書いてます。全部読みたい方は反転させて下さい。
読後、結構引っ張ってしまったのは、感想が二転三転してしまったからです。
ようやくにして、感想が落ち着いてきたので、そろそろまとめてみようと思います。
言わずと知れた(?)『サクリファイス』の続編ですが、『サクリファイス』を読んでいなくても、物語に入っていけるよう、工夫されています。
その前作との比較で言えば、ミステリ要素はさっぱりと言うか、皆無です。
ただ、それは悪いことではなくて、スポーツ小説として、より密度を増して、ロードレース/ツール・ド・フランスの世界に読者を誘う効果をあげていると思います。
ストーリーは、ツール・ド・フランスを舞台に、チーム消滅の危機と、それに伴うアンフェア(フランスの若き新星、ニコラを勝たせるため、チームのエース、ミッコをも蹴落とすような)な競争、そして付きまとうドーピングの影を描きながら、主人公白石誓(チカ)の選択、走りを描きます。
レースも終盤に差し掛かったところで、プロトンを襲う悲劇がやってきますが、それぞれの登場人物に来年のツールの舞台(作中で言う『楽園=エデン』)での宿題を与えられ、次のステップを踏んでいけるので、さっぱりとした読後感を得られます。
(ドニは死に損……?『サヴァイブ』も読んだ後だからこそかもしれませんが、生きているからこそ、次があるんだ、と言うメッセージにも感じます。穿ちすぎかな?)
僕が思う、それぞれの登場人物の来年のツールでの宿題は以下です。
チカ:ニコラに堂々と勝負を挑む。
ニコラ:またツールの舞台に戻ってくる。
ミッコ:山岳ステージでも勝利し、今度こそ完全な王者になる。
彼らがどういう形で宿題を解くのか、続編を読んでみたい。そう思わせる一冊です。できれば来年のツールの前に出版して欲しいなぁ。なんて思うのはよくばりすぎでしょうか(笑)
それにしても、 ツールで登場するジャージ(黄色のマイヨ・ジョーヌ(総合一位)、水玉のマイヨ・グランペール(山岳賞)など)を、巧みに小道具に使っているのは、すごく描写が上手だなぁ。と思いました。
個人的なお気に入りは、ニコラがマイヨ・ジョーヌ(黄色)を手放した後、再びマイヨ・ジョーヌを取り戻すべく、マイヨ・ブラン(白)を身に着け、果敢にアタックをする 「賢くはないが美しい」彼を「白い鳥」になぞられるところ。なかなか乙な描写です。
この辺のジャージの説明も含め、ロードレースやツール・ド・フランスを知らない人には、入門書代わりに手に取ってもいい本だと思います。